#0224 暫定税率廃止で変わる燃料コスト ~運送業を中心に広がる影響と次の一手~
2025/12/03
1.暫定税率とは?ガソリン税や軽油税に上乗せされてきた「暫定税率」とは、道路整備財源確保のため1974年、今から50年以上も前に導入されたものです。
・ガソリン: 25.1円/L
・軽 油: 17.1円/L
この負担が、ガソリンは2025年12月31日、軽油は2026年4月1日に廃止予定となっております。
2.廃止による影響について
暫定税率廃止により、最も影響を受けるのは運送業でしょう。
例えば、
・燃料コストの軽減:大型トラック1台で年間数十万円、業界全体では数億円規模の削減効果が見込まれます。
・価格設定や取引条件の見直し:配送・製造コストの低下により、契約条件や価格交渉の変化が広がる可能性があります。
3.運送業以外にも広がりが予想される影響
暫定税率廃止は、運送業だけでなく、燃料を多用する業界に広く影響します。
こうした業界では、燃料費の減少が利益改善に直結します。しかし単なるコスト軽減にとどまらず、次の投資戦略を考える契機にすることが重要です。
4.浮いたコストの活用-成長戦略
暫定税率廃止で生まれる余力は、単なる利益確保にとどめず、未来への投資に振り分けることが重要です。
例)
・物流DX:AI配車、倉庫管理自動化、リアルタイム情報共有で効率化
・脱炭素経営:EV・水素トラック導入、再エネ設備設置、環境認証取得で競争力強化
こうした取り組みを進めるうえで、補助金制度の活用も重要です。
5.活用できる補助金制度の具体例
○EV・水素トラック導入補助(車両購入・導入支援)
「商用車等の電動化促進事業」
○物流DX推進補助(配車・倉庫管理システム導入支援)
「物流施設におけるDX推進実証事業費補助金」
○再エネ設備導入補助(太陽光発電・蓄電設備設置支援)
「二酸化炭素排出抑制対策事業費等補助金(再エネの導入・地域共生加速化事業)」
※詳細は国や自治体の公式サイトをご確認ください。
主な実施機関:環境省、国土交通省、経済産業省
おわりに
今回の暫定税率廃止は、燃料依存型産業にとって大きな転換点です。燃料費の軽減分を未来への投資に振り向け、持続可能な経営戦略を構築するチャンスかもしれません。
しかしながら、暫定税率廃止に伴い道路整備財源が不足することが予想され、代替財源として新たな課税や料金制度が検討されることも見込まれますので、その対応が求められるかもしれません。
【参考】
国土交通省「道路IRサイト 財源」
財務省「税制改正の概要」
総務省統計局「小売物価統計調査(ガソリン価格)」
税理士法人 さくら総合会計 監査部 桃井 千佳